神奈川オルタナティブ協議会  【オルかな】公式ブログ

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8月21日開催・サードオピニオン会IN二俣川のご報告

去る8月21日㈰に開催された【オルかな】主催・サードオピニオン会IN二俣川
の様子をご報告します。
今回は参加者9名、うち新規の方が2名でした。
MCは例によって中川聡(全国オルタナティブ協議会代表)。
中川からは入院患者虐待でニュースになった兵庫県の神出病院について、
第3者機関によって明らかになった医療保険の水増し請求の常態化や院長の年収が3億円、
という実態に触れ、こうした問題について良識派精神科医はもうすこし内部批判を
しなければ、良心的な精神医療機関と神出病院のようなところが一般の人からは同一視
されてしまうのでは・・・、と指摘がありました。

会場からの主な発言(大意):
・ジャーナリストとして野田正彰先生の取材をしている。
御年78歳になられるが、日本における特殊な精神科医としてその考えを記録に残したい。
・服用中の向精神薬アカシジアになって困っている。悪夢にも悩まされている。
向精神薬がらみの自殺の多くはアカシジアが原因。
・あのとき、アシュトンマニュアルを知っていれば・・・。
精神科病院の看護師として患者の人権問題に直面、組織と対立して病院を飛び出し、
現在は地域で介護関係の仕事をしている。しかしここでも同じようなことをやっているな、
という葛藤がある。
・古くからある社会的入院が多い精神科病院は悪徳なところが多い。
・先日、熱中症で搬送された。
・【オルかな】の活動に協力していただけそうな精神科医と出会うことができた。
・ナルコノンジャパンを見学してきた。費用は200万から300万かかるので
余裕のある人向けだが、依存症治療のプログラムは素晴らしかった。
・福祉の人は当事者には「自分たちが心配だから」と言えばいいのに、
「あなたに必要だから」と押し付ける傾向がある。
・問題を精神医学の用語で語ることは一種の呪いになる。たとえば「睡眠負債
ではなく単に「寝不足」と表現したほうがいい。
・神奈川精神医療人権センターは何故シンポジウム「良い精神科医はどこにいる?」
に(思想的に相容れないはずの)樋口輝彦氏(日本うつ病センター名誉理事長)
を登壇させたのだろうか。
・人権センターは自らが主催するシンポで樋口輝彦氏を起用すべきではなかった。
・(樋口氏の起用は)センスがなさすぎる。今度人権センターに行ったときに聞いてみる。

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今回、中川から指摘がありましたが「同業者を批判しない」という医師の間に根強く
存在する慣習は、特に精神医療については実態をよく知らない一般の人々の誤解を招く
主な要因になってはいないでしょうか。


良心的な治療を行っている精神科医が一部に存在することは確かですが、そうした
精神科医も事件を起こした神出病院の院長のような悪徳精神科医を明確には批判しない
ために、一般の人々からは両者が同一視されている可能性があります。


実際、精神医療批判を口にすると他でもない「リベラル」「人権派」の人々から反発を
食らうことが少なくないと感じます。おそらく彼らは出版界で存在感のある
(数多くの著作を持つ)良識派精神科医こそが精神医療界の主流であると錯覚している
のでしょう。実際にはそのような精神科医は多くの場合、大学の研究者であったり
(日本の大学の医学部では取り扱っていない)精神分析の専門家であったり、という
「傍流」とも言うべき特殊な存在で、ふつうの臨床現場でお目にかかることは稀です。


このあたりの事情が知られていないことに加え、良識派精神科医が悪徳精神科医を批判
しないことも相まって一般の人には両者の区別がつかず、その結果「人権派」の人々
までもが精神医療の問題を取り上げても「やむを得ない事情があるのでは」
「苦渋の選択として、断腸の思いでやっていることでは」などと擁護に回るという珍事
が生じている節があります。


そして今回会場からの発言にあった、シンポジウム「良い精神科医はどこにいる?」
(神奈川精神医療人権センター主催、8月12日開催)に樋口輝彦氏が登壇した件。
同氏は、これまでの経歴を考えれば、薬物と入院を治療の柱に据える
日本において伝統的に主流の精神医療を体現する精神科医と言わざるを得ず、
人権センターの理念・思想とは相容れない人物と思われます。
他の登壇者と比べて異色の存在で、浮いた感じが否めません。

 

疑問の声が上がるのは当然です。


他の登壇者は、同氏と並んで称されることに不満はなかったのでしょうか。
当日会場参加していたフリーライターの嶋田和子氏がブログで報告しています。

ameblo.jp

やはり懸念通りというべきか、樋口氏は「うつ病は脳の機能障害」として
モノアミン仮説を説明するなど従来どおりの主流の精神医療の「教義」を展開、
質問も仕込みで、会場からは受け付けていなかったそうです。
ここで樋口氏がどういった背景の持ち主なのか調べてみましょう。

yenfordocs.jp上記サイトの「キーワード」のところに「樋口輝彦」と入力して検索すると・・・。
果たせるかな、2017年、2018年は連続して年間総額1,000万円以上を
大日本住友製薬Meiji Seikaファルマ、日本イーライリリーなどの製薬会社から
受け取っています。
同氏がなぜいまだにモノアミン仮説(すでに否定されている)にすがりつくのか?
という疑問の答えがここにあります。

今回のシンポを主催した神奈川精神医療人権センターの熱意には敬服しますが、
前提知識を持たない一般の参加者にどのような印象を持って受け取られるだろうか、
という視点が欠けていたと思います。


広報用のチラシを見ても、あたかも樋口輝彦氏が精神医療の改革に取り組んできた
一員であるかのような印象を与えますし、一方で、実際に改革を目指して
オルタナティブな精神医療のあり方を追求してきた他の登壇者たちが、
樋口氏に象徴される主流の精神医療を認めていると解釈される恐れもあります。


些細なことかもしれませんが、やはり見過ごせません。
一般の人々に訴求する際には、しばしば専門的な内容よりも
「印象のコントロール」が鍵を握っているからです。

【参考】
○神奈川精神医療人権センター

kp-jinken.org


○「アシュトンマニュアル」掲載サイト

www.benzo-case-japan.com


○ナルコノンジャパン

ichiharacenter.jp

(オルかな事務局 黒柳)