神奈川オルタナティブ協議会  【オルかな】公式ブログ

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1月15日実施・サードオピニオン会in二俣川ご報告

去る1月15日㈰に開催された、サードオピニオン会in二俣川の様子を報告します。
今回のMCは、いつもの中川聡が講演のため、【オルかな】代表で精神保健福祉士
三橋淳子が務めました。参加者にはおなじみの顔ぶれに加えて前回に続き家族会の方々、
そして精神医療について作品で取り上げたい、という漫画家の方などの姿がありました。
最初に三橋からどのように精神保健福祉士になったか、向精神薬の問題に気がついた
きっかけ、中川との出会い、なぜ独立してみつはし精神保健福祉士事務所を開業したか・・・などの自己紹介、そして精神医療被害者連絡会にはじまるオルタナティブ協議会の
これまでの歩みなどを説明しつつ、参加者との対話へと入っていきました。

会場での発言(大意)から:
・介護の仕事をしていたが過労のため精神科につながり、うつ病と診断され服薬開始。
・出産後、子どもが思い通りにならずパニック、育児ノイローゼに。
そこから入院につながり、家族からはこんな嫁いらない、と言われた。
・結局離婚させられ、子どもの親権も向こうに持っていかれてしまった。
ジプレキサを飲み始めたら、途端に体重が10kg増えた。
・人体の仕組みとして、入ってくるものがあればバランスを取ろうとする。
精神科医でも産業医経験者は薬の出し方が慎重。
産業医の仕事は患者の職場復帰を支援することなので。
生活保護ケースワーカーの99%は、統合失調症の人には
薬はちゃんと飲んでくださいね、としか言わない。
・今後、精神医療の問題について漫画のストーリーに盛り込んでいきたい。
・アルコール飲んでストレス発散できてればいいのでは?
私も若い頃、飲んで道に転がったりしていた、そのうちに自分の限界がわかってくる。
・無理に減薬を進めると離脱症状でわーもうだめだ、となって増薬や入院につながって
しまう。そうなると本人も傷ついて挫折してしまう。
・この会では、薬は医師の指導などではなく独自にやめた人がほとんど。
ご本人が覚悟を決めて取り組むことが鍵。
・若い男性の当事者にありがちなのが、一気断薬して激しい離脱症状を乗り越えられず
入院になってしまうというパターン。薬を減らすスピードは大切なので、しばらくは
飲んでいてもいいという構えで。
・ミュージシャンの高橋幸宏が逝去・・・脳腫瘍からくる誤嚥性肺炎が死因とされているが、
実際のところ「治療死」ではなかったか。盟友の坂本龍一も末期の癌とされるが、治療を
受けているのになぜ悪化していくのか?「医原病」ではないだろうか?
・70代になったが、なぜこんなに頑張っているのかと思う。
人のためになる仕事は元気が出る。
・ラジオ出演などの機会を捉えて「スキあらば薬害」と薬の問題について発信していきたい。

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 近年はそうでもなくなってきましたが、かつて日本の自動車メーカーの多くは、
大半の車種について4年サイクルでのフルモデルチェンジを繰り返していました。
これに対して「チェンジのためのチェンジだ」という批判が当時から少なからず
存在しました。
 技術的な必然性がほぼないにもかかわらず、人為的に「新しさ」を演出して
買い替え需要を創り出すという商法に多くの人々が疑問の声を投げかけていたのです。
 パソコンのOS、Windowsは最新バージョンが昨年に11となりましたが、更新せずに
以前の10を使い続けている方も多いのではないでしょうか。以前、Windows8が登場
したときも旧バージョンの7を使い続けた人が大半でした。
 PCメーカーが「ダウングレードサービス」と称して本来8がインストールされている
モデルをあえて7に戻して販売するといったことさえ行われていました。
 技術というものは開発・改良を重ねていくうちに成熟していき、次第に新たな革新の
余地・のびしろは縮小していきます。すると、供給する側としては無理矢理にでも
新しさを演出する必要が生じてきます。これが「計画的陳腐化」と言われる商法です。
 消費者は当初はそれに釣られてしまいますが、次第に学習して賢くなり、騙されなく
なっていく。自動車にしてもパソコンにしても、そう簡単には新製品に飛びつかなくなって
いきます。
 このような構造は医薬品の世界も同様であるといって良いでしょう。
製薬会社からは毎年のように「新薬」が発売されますが、実際のところそれらの大半は
既存の薬の組成成分に若干手を加えた程度のものであり、その効能は既存の薬とほとんど
変わりません。業界用語では「ゾロ新」と言われています。
 しかし、自動車やパソコンの場合と違うのは、薬となると新しいものを無条件に良いものと
思い込んで有難がる人が多いことです。

 技術というものは機能や効率だけではなく、それ以上に信頼性や、活用するための
ノウハウが蓄積されていることが大切です。
 そうした点では、古くの時代から長年使われ続けて徹底的に改良を重ねてきた技術の方が
優れているのです。長年使われ続けている技術なら欠点がどこにあるか、その対策はどの
ようにすれば良いか(ノウハウ)もわかっています。「枯れた技術」などと言われます。
実際、
・銀行のシステムでは現在でもOSとしてWindows98が使われている。
・ロシアの宇宙船ソユーズは1960年代の基本設計を現在でも引き継いでいる。
半導体メーカーのインテル社は1987年発売のCPU「80386」を、兵器用に現在も製造中。
などの実例があります。
 新しい技術の方が機能や効率は優れているはずですが、金融、宇宙、軍事などのように
わずかな問題が生じても取り返しのつかないことになる世界では信頼性の高い「枯れた技術」
が使われ続けるのです。
 人間の体に作用する薬もまた、使い方を誤れば命を奪うことさえある以上、信頼性が何より
重視されるべきであるはずです。

 しかし現実の医療の世界では「新薬」を使うことのリスクは考慮されているでしょうか。
むしろ、あまりに安易に飛びつく医療者・患者が目立つように思われます。
 薬の世界で「枯れた技術」に相当するものが「エッセンシャルドラッグ」です。
WHOが「効果が科学的に証明され、長年の使用により安全性も確認され、しかも安い、世界的に選び抜かれた必須医薬品」としてリストアップし、公開しています。

www.who.int
新薬をやたらと使いたがる医師は「最新の情報に明るい」というより、むしろ不勉強である
可能性があります。患者の方でも新薬に過剰な期待を寄せるのではなく、自動車やパソコンで
発揮してきたような学習能力を働かせてほしい。おそらく史上最大の薬害となるであろう、「レミングの行進」を傍観しつつ、そう願います。

最後に、薬害エイズ事件で世論が沸騰していた1996年に出版された古典的著作を紹介します。
薬害が生み出される構造について論じつくされています。
およそ四半世紀前の教訓は、結局のところ生かされなかったと言わざるを得ません。
薬害はなぜなくならないか―薬の安全のために



(オルかな事務局 黒柳)